虫の歌、市川春子

鑑賞した日付:2021年5月24日
漫画「虫と歌と25時のバカンス」  作者:市川春子
★★
総合点:43点/100点

 宝石の国があまりにも良かったので読んでみた漫画。短編集1と2。この2冊に沢山の短編がまとめられている。
全体的に面白いとは思わなかったけれど、この作者の作風がどういうものなのかはよく分かったような気がした。


 少女漫画の様な絵は非常に綺麗で良いが、少女漫画の様な曖昧なストーリーやセリフ回しがおじさんには少し分かり辛かった。以前、いくえみ綾の少女漫画を読んだ時に、絵は独特な雰囲気があってキレイだけど全く内容が頭に入ってこない様な感覚を味わったことがあったが、まさにそれと同じような、意味が分からなくて評価しようがない様な作品にも思った。つまり、少女漫画特有の意味不明感があったような…。

 全体的には五十嵐大介の作品に非常に似ていて、非常に幻想的というか感覚的な漫画のようにも思った。別の言い方をすれば、絵は素敵だけど不思議世界の話すぎて意味が分からないというか、ストーリーやセリフなどはあまり意味はないというか、とにかく何とも言えない作品だと思った。

 SFファンタジーでもないしユルふわファンタジーでもないし、しいて言うならスピリチュアルで幻想的な話…のようにも思ったけれど、そんな中に人体や生命のアカデミックな知識がちりばめられているような作品で、そういう作風の人なのだなと思った。
 「宝石の国」がまさにそうなのだが、人体?が簡単に壊れたり破損する…という描写をよく使っていて、それでいて痛みなどはなくすぐに治る…という描写がこの作者の性癖というか、何か表現したいコアの部分なのだろうなと思った。

 宝石の国は少年漫画の様にストーリーやセリフが象徴的だったり分かりやすくてメチャクチャはまったが、それ以外の作品はイマイチのめり込めないというか、のめり込ませないような退屈さというか意味不明感があった。

 悪い作品群ではないけれど、流石に評価できない様な幻想的な作品だった。
 漫画作品と言うよりも、作者にしか意味が分からないような「詩(ポエム)」みたいな短編集だった。或いは、「面白いストーリーの漫画」ではなく、本当に私的なエピソードのアイデア集という感じ。

 フォスの飄々とした喋りやいくえみ綾よろしく人気女流作家の少女漫画によくあるちょっとオシャレで鼻につく嫌な感じもあるんだよなぁ…。アレなんなんだろうな。NANAとか安野モヨコとか岡崎京子とかもそうだけども。少女漫画特有のムカつく感じというか、美化されすぎていてそれでいて醒めていてちょっとイラッとする感じ…。