鑑賞した日付:2019年1月20日
漫画「響 〜小説家になる方法〜」 作者:柳本光晴
★★★★★
総合点:91点/100点

サイコ-パスと同時進行で読んでいたのだが、評価もサイコ-パスとかなり似てしまう。
こちらは重い作品ではなく、むしろ笑えるシーンや軽すぎるシーンもあるのだが、
ちょっと…、僕にとっては良い部分と悪い部分が混在していた。


鮎喰響がチート級の天才キャラで…という部分は良いし、痛快でもあるのだけれど、
やっぱり非現実的な、つまり漫画的な言動や展開が少し気になってしまった。

 1巻の最初の時点、響が応募要項を守らずに小説を送ってきて、それを一度編集者がゴミ箱に捨てるシーンがあるのだが、現実なら本当にそこでこの話は終わりである。
それじゃお話にならないからそこからの展開が始まるわけだけど、僕はそういうのは本当に許すべきではないと思っているので、そのシーンは頂けない。

 本当にツマラナイことを言うようで気が引けるが、やはりルールや一般常識が無い奴がそれなりに大きなリソースを得るのは許せない。それが天才というものだ!と言われればそれもそうだが、そういう天才は生きている間はそれが故に不遇であるべきだと思う。(まあ、だから響も実際に印税は7万円しかもらっていないということになっているが…。)つまり、「実はルールを守らなくてもOK!」というのなら、ルールを守る努力をした人の努力や気配り、気遣い、注意が無駄になってしまうし、不公平だ!ということ。

 とはいえ、それらは漫画的な演出だし、勿論、それがこの漫画の良いところでもあるので無粋なことを言うつもりはないのだけれど、ちょっとご都合主義で浅はかな気もした。

 僕は「運の研究」と同時に「天才観察、天才研究」もライフワークになっているので、この話はそういうところに言及されている貴重な作品でもあり、それが良かったところでもあるのだが、僕のリアルな天才理論とは少し、否、かなり天才に対する感覚がかけ離れているのもちょっとストレスになった。
「響」が小説の話なので、その小説の話で言うなら、それならむしろ村上春樹の「ノルウェーの森」の中で出てきた天才論の方が現実的で的を射ていて個人的にはしっくりくる。そもそもこの話の中に出てくるリカちゃんのお父さんであるところの祖父江先生というのは村上春樹をモデルにしているのかもしれない。

 ただ、芥川賞や直木賞にノミネートされる様な作家さんが、普段は成功を夢見つつも中華飯店みたいな所でアルバイトをしていたりする様子が何度も出てきて、そういう現実的な部分が沢山リアルに描かれていたのがやはり貴重で良かった。

2020-6-20。
鑑賞したのは「漫画・響」の1巻から11巻までだけど、最近、完結したらしい。
サムネイルの関係で以下、実写映画化された物のトレイラーを付けておく。









ベストセラー小説の書き方 (朝日文庫)
ディーン・R. クーンツ
朝日新聞社
1996-07-01