EPISODE.01 121045
甲斐田裕子


鑑賞した日付:2019年8月11日
「約束のネバーランド」  作者:白井カイウ
★★
総合点:45点/100点

※2019-12-16
HDJMの方でOP曲を紹介したので、また、二期の制作が発表されたようなので、それが出る前に、先にこのレビューを以下に記載しておく。フジテレビのノイタミナの作品。

とにかくカズオ・イシグロの「わたしを離さないで」のパクリ作品であるという評を予め知っていたので、内容が良かろうが悪かろうが、ボロ糞に言ってやろうというくらいの気持ちで見たアニメ。
さて、実際に見た感想としてはどうなるのか?



ハッキリ言って、とても面白かった…。
ただ、それでもやはり、面白かろうが悪かろうが、僕の聖書と言っても良い「私を離さないで」から着想を得ている時点で高評価するわけにはいかない。手癖の悪い泥棒のスーパープレイ!みたいな作品に思う。

カズオ・イシグロの「わたしを離さないで」を読んだ多くの人が、それをパクったり、別パターンのストーリーを思いつくことであろうから、それを臆面もなくやってのけたという事が凄いと言えば凄いが反則というか、あまり認めたくない。陸上競技で言えばドーピングで高成績!みたいな話だ。これは芸術家、クリエイターにとってのドーピング作品。内容が良かろうが悪かろうが決して褒められない。

それでも、そのパクリの概念からしてそもそもアーティストの世界では曖昧なので、なんとでも言えるし解釈できるし、だからこそズルいとも思う。そもそも、この世の中に完全なオリジナルの物など存在しないということも言えるし、「わたしを離さないで」だってジョージ・オーウェルの著作物(1984年や動物農場)から着想を得ているといわれているし、そりゃ、どこまで行っても完全な黒と断定することは出来ないけれど、ちょっと安易なパクリだなと思うし、話自体が付け焼刃で作られたものだと思う。その証拠に、このお話は少なくとも全12話ではまだ全然話が終わっていない。「僕達の冒険はこれからだ!」みたいな感じに終わる。大して考えていないのだろう。今後の展開とかはそうなった時にまた考えればいい…というくらいの気持ちで作られている。
(後から調べてみたら、このアニメはコミックのたった5巻までの内容なんだね。だとしたら上述の評は当てはまらないし、シーズン2からは批判無くして見ることができるかもしれない。)

そういうやっちゃった感は少なくとも、「わたしを離さないで」のファンである僕からすれば、理屈ではないところでもう許せないというか、心証を悪くする一因になる。

ただ、こうしてしっかり見てみると、その舞台設定は確かに「わたしを離さないで」から着想を得ていることは間違いないが、それ以外の部分は完全にオリジナルの話であるということは分かった。なので、本来なら、「パクリだ!パクリだ!」と中傷することもないのであるが、それ(「私を離さないで」だけはパクっちゃいけないという意味で)だけはやっちゃいけないアーティストの矜持の部分なんだよね。

なんでもまずやっちゃえばイイんだ!
とも言えるし、
なんでもやりゃーイイ!ってもんじゃないんだよ!!
とも言える、ちょっと難しい評になる。

その辺のパクリ問題云々を抜かして、純粋にこの出来上がった作品の良し悪しを語るのならば、かなり面白いアニメであったといえる。なので、カズオ・イシグロの「私を離さないで」を未だ読んだことが無い人にとっては良い作品に映るだろうし、おススメできる。いや、お勧めはしたくないな…。

あくまでも少年漫画的な話でもあり、大人向けのものでは無い。子供向けにしてはよく出来ている、といった感じ。色々な心理戦や戦略の部分が意外と練り込まれていて面白い。常に相手の裏をかくということを意識して行動しているノーマンを軸にした主人公達の駆け引きが、子供向けのものにしてはとても作り込まれていて面白いということだ。
特に、「最終期限が2か月後だから…、あえて10日で決行する」という部分と、「逃げ道は一本の橋しかない…、だから、あえて橋から逃げない」とか、そういう部分が良かった。でも最初に「門」に行った時に、リトルバーニーを門に置いてきたけどなにも見ていない、行ったのはエマとノーマンだけど…という風に装えばその後の「ママを出し抜くくだり、駆け引き」は全部いらなくなるなど、理論に穴がありすぎ。子供だまし。

つまり、デスノートやハンターハンターなどが好きな人にはお勧めかな。
対象年齢的にもちょうどそんな要素があるアニメであると言える。
理論に穴があり過ぎて、また、設定が御都合主義すぎるけど。ただ、漫画の方では話はもっと続いている様なので、これはあくまでもこの時点でのアニメの話。
そして、それらも子供向けの、子供だましの作品としてなら良いだろう。

そういう大風呂敷を最初に広げて見せて、あとのことはあまり考えてない…みたいな作品を、例え面白かったとしてもあまり褒めるわけにはいかない。
プロモーションを得てやっちゃったもん勝ちの作品。

僕があまり「進撃の巨人」が好きでない理由と似ている。
ただ、よく考えてみると沙村広明の「ブラッドハーレーの馬車」もこんな話だったな…。

それから、シスタークローネの描写がギャグっぽくなっているけどかなり差別的とも取れて草。

あと、全体的に絵が凄く綺麗な気がする。